《解体小説》建替え編・第三章

解体工事を楽しんで学ぼう!解体小説~3つの物語~

 

第三章 「解体工事ってこんなにかかるの?」

 

 

数日後、○○ハウスからの提案書が郵送されてきた。内容を見ると、

●建築費 3024万円
~詳細~

●外構工事費 224万円
~詳細~

●解体工事費 200万円
~一式~

となっている。

 

ほぼ予算の範囲内に収まっているが、解体費用が想定していたよりも100万円も高くなっている。前に調べた時は確か坪単価3万円前後と書かれていたような気がするのだが……。今ある建物が延床面積約30坪だから、坪単価と延床面積を単純にかけて算出してみた金額だが、解体費用ってそんなにかかるんだろうか?

しかも建築費や外構工事費は項目別に単価など詳細に書かれているが、解体費用に関しては一式見積りとなっているので、何にどれだけかかってくるのか皆目見当がつかない。

 

建替え編・第三章
後日、○○ハウスの担当者に聞いてみると、解体工事は下請けに出すため、どうしても費用は高くなってしまうという。

それなら安くする方法はないか尋ねてみると、自分で解体業者を探して直接お願いする方法、建築会社とは別の業者になるので分離発注というらしいが、これをすると安くなりますと親切に教えてくれた。

 

安くなるならばと自分で探すことにしたが、解体業者というとなんだか怖いイメージがあるし、電話をかけるのも少し勇気がいりそうだ。

それでも背に腹は代えられないので、ネットで探してみると解体業者を何社かまとめて紹介してくれるポータルサイトがあったので、これならばと思って必要事項を入力してメールで問い合わせてみた。するとすぐに返信がきて、△△土木と□□興業の2社を紹介してもらえた。

 

翌週末には紹介してもらった2社と時間をずらして立会いをし、見積もりを出してもらった。金額はどちらも150万円前後だったので、最初に提示されたものより50万円近く安くなることになる。

それでも当初、考えていた金額よりも高かったし、これが適正なものなのかも分からなかったので、紹介してくれたところに問い合わせてみると、建物の規模や庭木伐採などの付帯工事があること、また地域等を考慮しても非常に良心的な金額で出ていますよ、とのことだった。

 

人を疑うことを知らない自分としてはその言葉だけで充分だけども、嫁がそれだけでは納得できないと言い出し、いろいろなサイトで解体の費用例を調べまくっていたようだが、結果的には適正なものだったみたいだ。

 

見積もり金額は□□興業の方が少し割高だが、立会いをしたときに担当の人が工事の進め方や近隣対策もしっかり説明してくれたし、解体後に必要な建物滅失登記の仕方についても丁寧に教えてくれたので印象としてはかなり良い。

お願いするとしたら□□興業だな。

 

しかし、ケースバイケースではあるだろうが、分離発注をすると結構安くなるんだなぁというのが率直な感想だ。下請けや孫請けに出されたらその分、中間マージンも発生するので当然と言えば当然なのかもしれない。

もしそんなに差が出ない場合は一括して任せられるという安心感もあるし、解体業者を探す面倒も省けるのでそれはそれでいいんだろうけど、今回ぐらい開きがあると分離発注したほうが断然お得だよな。

差額分は引越し費用や家具の購入などに充てられるので、本当に助かる!

 

今回の一件を通じて、まだまだ知らないことがたくさんあるんだなぁ、と改めて感じさせられた。

 

 

第二章「どこに建ててもらうべき?」エピローグ

 

 

 

解体サポートからの解説

 

 

坪単価

 

このケースでは、建物を解体する場合の1坪(約3.3㎡)あたりの金額。

 

解体工事の見積もりはこの坪単価×延床面積(坪数)で計算されることがあります。

坪単価は建物の構造や地域によって異なってきます。

 

【首都圏】

・木造3.5~4.5万円

・鉄骨5~6万円

・RC(鉄筋コンクリート)5~6万円

 

【関西圏】

・木造3~4万円

・鉄骨5~6万円

・RC(鉄筋コンクリート)4~5万円

 

上記の金額はあくまでも参考であり、立地条件等により変わってきます。

例えば家の前の道幅が狭く工事車両が入れない場合や、お隣の家とかなり接近していて重機が使えないといったときは費用は割高になります。

また建物の規模は大きければ大きいほど坪単価は下がりますが、逆に規模が小さいものは上がってくる傾向にあります。

 

 

 

分離発注

 

このケースでは、解体工事と新築工事を別々に発注すること。

 

【分離発注のメリット】

分離発注の場合、解体業者さんと直接の契約になるため、平均で約20%の工事費節約が可能とも言われています。また、実際に施工する業者さんと直接話ができるため、明瞭な見積りはもちろんの事、話のいきちがい等のトラブルが発生しにくいです。

解体費用を安く抑えて少しでも次に建てる家に予算をかけたいとお考えでしたら、解体と建築の分離発注を検討されてみてはいかがでしょうか?

まずは住宅施工会社から解体見積もりを出してもらい、安いところがあれば自分で解体業者を探してもいいか確認をとります。(これに難色を示すところは解体費をかなり上乗せしてる可能性が高いです。)

下に簡単ないくつかのケースで解体費用を比べてみました。

 

分離発注

 

●ケース1・・・解体工事依頼→ハウスメーカー→下請解体業者→孫請解体業者

●ケース2・・・解体工事依頼→工務店→下請解体業者

●ケース3・・・解体工事依頼→解体業者(「分離発注」)

 

そして、同じ条件で別の解体業者に見積もりを出してもらいましょう。

 

ただ、解体から建築まで一貫して任せられるのは楽だし安心という意味で発注される方もいると思います。分離発注するかどうか検討されている方は、金額の差などを考慮する意味も含め、じっくりと検討されてみた方が良いでしょう。

 

 

 

付帯工事

 

解体工事での付帯工事とは建物本体工事とは別の内容の工事をさすことが一般的です。

代表的なものでいうと、残置物(不用品)撤去、車庫、ブロック塀や土間コンクリートの撤去、樹木や庭石、井戸、物置の撤去などがあります。

 

付帯工事を単独で行うときは建物の解体と一緒にする場合よりも費用は割高になるケースが多くなります。

 

 

 

近隣対策

 

特に建替えの場合は近隣対策をしっかりやらないと後々ご近所さんとのトラブルに発展しかねないので、丁寧に行いましょう。工事の日程が決まったら業者さんと一緒に挨拶廻りをし、工事内容等を説明します。

 

また規模の大きな工事の場合、家屋調査を行い工事前と工事後をしっかり調査してもらう必要も出てきます。

例えば、家屋調査をせずに解体工事が終了した後、近隣の方から「コンクリートの床にヒビがはいった」とクレームがきた場合、 そのヒビが工事の振動で入ったものなのか、工事前からあったものなのかを証明することができず、その補修を施主が行わなければならなくなるなど、トラブ ルや追加の出費に繋がるケースがあります。 何より、建て替えで同じ土地に住み続ける場合、トラブルのあった相手と近隣の関係が続きますので、後々まで不要な心労が尾を引いてしまうことにもなりかねません。

 

そのようなリスクを避けるため、工事前に近隣の住宅に説明・お願いをしたうえで、家屋の全景や、車庫・花壇などの工作物、必要に応じて内壁・天井などの亀裂や、柱・床などの傾斜を調査・撮影しておくことが重要になってきます。

 

調査しておいたことによって、近隣に生じた損害が明らかに解体工事によるものだと証明できた場合、その補修や補償が施主の負担になることはまずなくなります。
調査には近隣の方の協力も必要となってきますが、施主・近隣の方ともに調査によって回避できるリスクはとても大きなものとなります。
解体する建物が鉄筋コンクリート造の場合や、近隣の建物がコンクリート造など振動の影響を受ける恐れがある場合は、家屋調査をご検討いただくことをお勧めいたします。

 

 

 

建物滅失登記

 

建物、家屋を解体したら1ヶ月以内に滅失登記を行い、法務局の登記簿上からその建物が存在しなくなったことを登記しなければな りません。滅失登記は申請義務になっていますので、登記の申請を怠った場合には、10万円以下の過料に処されることがありますので、ご注意ください。

 

建物滅失登記に関する手続きは専門的な知識も要しますので、手続きの仕方について、建物取毀し証明書の発行とともに解体業者にアドバイスしてもらいましょう。

申請すると法務局から市町村役場へ通知が行くため、施主が手続きをしなくても課税台帳からはずれます。
滅失登記はご自身でも出来る簡易的な登記と言われていますので、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

(土地家屋調査士に依頼すると4~5万円程度の費用がかかります。)

 

◎滅失登記の方法(ご自身で登記をする場合)

 

【1.登記簿の特定】

滅失登記の申請書には、建物の登記簿上の所在や家屋番号などを記載する必要があるため、登記簿を取得して確認する必要があります。

登記簿謄本(登記事項証明書)は最寄りの法務局で取得することができます。

その際に「住居表示」ではなく「地番」や「家屋番号」を特定する必要があるのですが、建物の所在(地番)と家屋番号は、権利証や、固定資産税評価証明書、固定資産税の納税通知書などに記載されています。

(「住居表示」とはいわゆる住所で、「地番」とは全く別物です)

なお、もしその建物が登記されていなければ、滅失登記をする必要はありません。

 

【2.申請する人は?】

原則として建物の所有者が申請する必要がありますが、例えば共有名義の場合は共有者の一人からでも申請することが出来ます。

また、相続人から登記を申請することも可能です。わざわざ相続登記をする必要はありません。ただ、もし相続登記をしている場合は所有者として申請します。

 

【3.滅失登記に必要なもの】

・滅失登記の必要書類は以下の通りです。

・登記申請書(委任する場合は必要ない)

・取毀し証明書(解体業者から発行してもらう)

・解体業者の印鑑証明書

・解体業者の資格証明書or会社謄本

・住宅地図(現場のわかる住宅地図の添付要求されることがあるので問い合わせる)

・登記申請書のコピー 1部

・委任状(自分で行う場合は必要ない)

・依頼人の印鑑証明(自分で行う場合は必要ない)

※自治体によっては、実印(発行後3ヶ月以内の印鑑証明書添付)も必要な場合があります。

 

【4.提出方法と申請先】

下図①~⑤(大きさは全てA4サイズ)を重ねて左側をホチキスで止めます。

提出先は管轄の法務局の不動産登記申請表示係の窓口で登記申請書類一式を提出します。 管轄の法務局を調べる場合は下記法務局のホームページをご覧下さい。

なお、申請書類一式を法務局へ郵送することも可能ですが、書類の不備などがあれば直接法務局に出向くことになるので、出来れば直接窓口に出向いていただいた方がいいでしょう。

 

建物滅失登記

 

●委任する場合

土地家屋調査士に委任する形になります。 ご自身で上記(2)~(5)の書類を揃え、委任する土地家屋調査士にお渡しください。 代行金額は4~5万円程度になります。(目安としてお考えください。)

 

●登記されている所有者が亡くなっている場合

その物件の所有者を確認する為の住民票の除票が必要です。 また、登記されている建物の所有者とご本人の関係を示す書類とご本人の住所を確認できる住民票が必要になってきます。

 

●相続人が申請をする場合

相続人であることが証明できる戸籍謄本等を提出する必要があります。 この戸籍等は、相続人の現在の戸籍だけではなく、亡くなった方の全ての戸籍の除籍や改製原戸籍なども提出する必要があります。

 

【5.登記完了証を受け取る】

建物の滅失登記が完了すると、「登記完了証」という書類が交付されます。 登記完了証は、滅失登記が完了したことを証明する書類ですので記録として保管しておきましょう。 (申請してから完了するまで1週間程度かかるようです。)

 

●未登記物件を解体した場合

登記がされていない家屋を解体した場合は「家屋滅失届」を市区町村の税務課窓口に提出する必要があります。
またその際には、解体業者から発行される取毀し証明書(解体証明書)を添付します。

提出をされた家屋滅失届に基づき、役所の職員による現地確認が行われる場合もあります。

未登記の物件を取り壊しても家屋滅失届を提出しないと市区町村で把握する事ができず、固定資産税が誤って課税されることになりかねません。

ちなみに登記してある家屋を解体した場合は役所に「家屋滅失届」を届出ても登記の滅失はされませんので、法務局において家屋の滅失登記が必要です。

 

【まとめ】

・登記されていない家屋を解体した場合 ⇒ 市区町村の税務課に家屋滅失届を提出する

・登記されてある家屋を解体した場合 ⇒ 管轄の法務局に建物滅失登記をする

 

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