アスベスト規制強化 住宅解体への影響は?
建築物等の解体等工事における石綿(アスベスト)の排出等の抑制を図る目的で令和2年6月5日、「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が公布、令和3年4月1日に施行されました。
これまで一般的な戸建て住宅で使用されていたアスベスト含有建材(レベル3)に関しては規制の対象外でしたが、解体工事において含有建材からアスベストが飛散することを防止するために強化されることになります。
どのような内容なのか、また皆様が今後解体する際にどのような影響があるのかを解説していきます。
【先読み!この記事の結論】
- すべてのアスベスト含有建材へ規制対象が拡大される
- 都道府県等への事前調査結果報告の義務付け
- 作業の増加で解体費用が高くなる可能性がある。
- レベル3も規制されるものの罰則対象外なため遵守しない業者が出てくる可能性も
<目次>
- 大気汚染防止法の改正について
- 強化される内容
ⅰ)規制対象の拡大
ⅱ)事前調査結果報告の義務付け
ⅲ)直接罰の創設
ⅳ)不適切な作業の防止
ⅴ)その他 - 施主の負担と注意点
- まとめ
1.大気汚染防止法の改正について
令和2年6月5日、「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が公布、令和3年4月1日に施行されました。
建築物等の解体等工事におけるアスベストの飛散を防止するため、全てのアスベスト含有建材への規制対象の拡大、都道府県等への事前調査結果報告の義務付け及び作業基準遵守の徹底のための直接罰の創設等、対策を一層強化するというものです。
2.強化される内容
ⅰ)規制対象の拡大
これまで規制対象はレベル1、レベル2で、アスベスト含有成形板等のレベル3は対象外でした。しかし、不適切な除去等によってアスベストが飛散することも懸念され、規制対象を全てのアスベスト含有建材に拡大するというものです。これによりアスベスト含有建材が使用されている可能性もある戸建て住宅も対象となります。
ⅱ)事前調査結果報告の義務付け
アスベスト含有建材の見落としなど不適切な事前調査を防止するため、元請業者に対して一定規模以上等の建築物等の解体等工事についてはアスベスト含有建材の有無に関わらず、調査結果の都道府県等への報告が義務づけられます。この調査は一定の知見を有するものによる書面調査、現地調査など法定化されます。
一定の知見を有する者については3年程度で30万人~40万人程度、育成に取り組む考えのようです。
ⅲ)直接罰の創設
隔離等をせずに吹付けアスベスト等の除去作業を行った場合、その者に対する直接罰を創設されることになりました。
ⅳ)不適切な作業の防止
元請業者に対してアスベスト含有建材の除去等作業の結果を発注者へ報告することや、作業に関する記録の作成、保存が義務付けられることになります。また一定の知見を有する者による作業終了の確認を行わなければならなくなります。
ⅴ)その他
都道府県等による立入検査対象の拡大や災害時に備えた建築物等の所有者等によるアスベスト含有建材の使用の有無の把握を後押しする、国や地方公共団体の責務の創設等、所要の規定の整備を今後行うとされています。
3.施主の負担と注意点
アスベストの事前調査やその報告など、業者がしなければならない作業が増えるため、その分のコストを見積もり項目に追加され、施主の負担が増える可能性があります。
また、今回の規制対象の拡大によってレベル3のアスベストに対しても作業の義務化はされますが、直接罰の対象にはなりません。このため経費を浮かせようと義務を怠る業者も出てくることが予想されます。ご自身でもある程度の知識をもって、確認する必要が出てきそうです。
まとめ
大気汚染防止法の改正に伴い、吹付けアスベスト等だけでなくアスベスト含有建材が使用されている可能性がある一般的な住宅も規制の対象となります。
アスベストは有害なため規制拡大は人体への影響も考え前向きな法律ですが、業者がやらなければならない作業が増えるため、解体工事費が高くなることが予想されます。昨今は産業廃棄物の処分費の高騰で解体工事費が上昇していますが、さらに負担がかかることが予想されます。
空き家となっており、近々解体しないといけない物件がある場合は費用を少しでも抑えるためにも早めの解体工事を検討されるのもひとつでしょう。
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