貸している家が老朽化!どうする?立ち退き交渉

今現在、ご自己がお持ちの物件を貸家として提供している方、もしくは今後貸し出しを考えているという方に、ぜひ知っておいていただきたい内容をまとめました。

貸家(貸す予定の家)が古く建築から時間が経っている場合や、災害多発地域に存在する場合は特にご注目ください。

貸家が老朽化!借主にどう説明する?

もしもあなたが人に貸している物件の耐震性に問題があることが分かり、すぐにでも解体工事もしくは建替えをすべき状況になったとします。

このとき仮に「お宅を解体することに決まったので、退去してもらえませんか」と借主にお願いしたとして、「そうですか、分かりました」とスムーズに事が運ぶということはまず考えられません。

自宅や実家の解体ならば、自分の都合で好きに解体工事をしてももちろん大丈夫ですが、貸家は文字通り「人に貸している家」です。貸主の一声で簡単に解体工事が決まってしまっては、借りた人が落ち着いて住まうことはできませんよね。

不要な言い争いは避け、かつ両者が納得のいく結論に着地するためには、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。

「解体すべき」ということの正当な理由を告げる

唐突に「あなたの家を解体します」と言われた側としては、当然「なぜ?」という疑問が浮かびます。

貸主としての交渉の最初の一歩は、「なぜ解体すべきなのか、貸主都合ではない正当な理由を告げること」です(この正当事由を告げるという手順は、借地借家法第28条にも定められている正式なものです)。

問題の建物の耐震診断を受ける

正当な理由を伝えるためには、解体工事を行うという判断に至った何かしらの証明が必要になります。(ここで「更地にして土地を貸し出したいから」といった理由をかざすのは完全なる貸主都合であり、正当事由にはならないので要注意です。)

具体的には「その建物が、そこに住まう人や近隣の住宅・住民に被害をもたらす可能性がある」といった第三者目線の理由が必要になります。

たとえば、衛生面に問題のある家屋(ゴミ屋敷化)や倒壊のおそれのある家屋などが対象になります。老朽空き家の判断基準と似た部分がありますね。

そして「解体すべき理由」をより確固なものにするため、大抵は耐震診断を受けることになります。

解体が必要になるほど老朽化した家屋というのは、それ相応の時代に建てられたものですので、現在の耐震基準を満たしていない可能性が非常に高いのです。

この耐震診断によって、地震などの災害により倒壊する危険性を指摘されれば、それが貸家の解体に必要な「正当事由」にあたり、ここでやっと借主と交渉できるステージに立てることになります。

「3ヶ月以内に退去してほしい」は通用しない

解体すべき理由が証明できたからといって、実際の退去日を勧告の日から1ヶ月後や3ヶ月後に設定することはできません。

借主に立ち退きをお願いする際は、前項の正当事由を明確にした上で6ヶ月以上前に退去勧告を出す必要があります。これは借地借家法第27条でも義務付けられている正式なルールで、もしも6ヶ月以内に通知されれば借主はそれを拒否することができるのです。

さらに退去日(契約解除)の1ヶ月前にも、念押しのように同様の通知を再度行う必要があるので注意が必要です。

立ち退き料の支払いが必要な場合も

正当事由の提示、退去勧告の期間ともにきちんと法に則った上で立ち退き依頼をしたとしても、すんなりと了承を得ることはなかなか難しいのが現状です。

こうなると、やはりお金で解決する方向に運ぶことは避けられないでしょう。

いわゆる「立ち退き料」(借地借家法第28条に記載)を支払うことで交渉材料の強さが増しますので、渋っていた借主も了承する可能性が上がります。

この「立ち退き料」の内訳としては、退去にあたり借主が請求しても不自然ではない費用や条件ということが大前提です。たとえば、

・(敷金を預かっていれば)敷金の返還
・家探し(場合によっては職探し)にかかった時間の費用換算額
・引越しにかかった費用(実費)

などが考えられます。

金額については法律で明確に定められていないため、お互いに良識的な判断のもとで交渉を進めていくことが大切です。

※支払いは義務ではないため、根気よく話し合いを続けることで解決できそうな相手であれば「最終手段」と考えて良いでしょう。

立ち退き料の受け取り拒否「何があっても立ち退きできない」と言われたら?

考えられるのは、「お金の問題ではなく、この家・地域に住み続けたいから絶対に退去はしない」と言い切られてしまった場合。

確かに借主には、このような主張をする権利が借主に手厚い借地法により認められているのですが、倒壊の危険が迫った家屋をいつまでも貸し続けるわけにはいきませんよね。

このような状況になった場合、借主に対して地道に交渉を続けるよりほかありませんので、貸主は非常に歯がゆい思いをする羽目になってしまいます。

何を言っても駄目ということであれば、最終手段として簡易裁判所に提訴することを視野に入れなければいけません。

裁判所で貸主側の主張が正当と認められれば、正式に強制退去を求めることができるようになります。

まとめ

家屋の貸し借りに絡む「借地借家法」は、現在は借主側の保護に大きく傾いた法律と言えます。

そのことを知った上で、法外な立ち退き料を請求してきたり、倒壊の危険を顧みず永続的に住み続けようとする借主も少なからず存在することも事実です。

裁判沙汰という最悪の事態に陥ることを避けるため、交渉の最初の段階からお互いを思いやる気持ちで誠意ある話し合いに努めることが何より重要なポイントになります。

調べられることは事前に調べ、時には専門家の知識に頼ることも視野に入れておきましょう。

解体サポートでも弁護士や司法書士などの専門家のご紹介も可能ですので、心配事のご相談だけでもどうぞお気軽にご連絡ください。