火災に地震… “解体予定の空き家”でも保険に加入するべき?

私たちが生活の拠点とする「住まい」に対しては、持ち家・賃貸物件の如何にかかわらず“火災保険”や“地震保険”といった保険をかけることが一般的となっています。

こうした自然災害などの被害は個人の行いによって防げるものではなく、どこに住んでいようと、誰しもが被害に遭ってしまう可能性を抱えているからです。

では、住宅とは少し性質の異なる「解体する予定の空き家」に対しても、同じように保険をかける必要があるのでしょうか?

住んでいるわけでもなく、いずれ壊してしまう予定の空き家。「一般的な住宅と同じ保険がかけられるの?」「そもそも加入は必要?」といった疑問にお答えしていきます。

結論…空き家にも保険はかけられる。ただしハードルは高め!

まず、「空き家に保険をかけること」自体は可能です。

しかし、空き家はその性質上 常時人の目があるわけでも、手入れがしっかり行き届いているわけでもありません。そのため一般の住居用の建物よりも耐久性が低い=「損傷リスクが高い」とみなされ、加入のハードルも幾分か高くなってしまうのです。

人目がないということは放火や住み着きのターゲットにされやすく、管理がされていなければ建物自体の劣化スピードが格段に上がる(=ちょっとしたきっかけで倒壊・全壊しやすくなる)から、と考えれば理解しやすいと思います。

自動車保険の契約で、若年層や低等級ドライバー(=事故を起こすリスクが高い)の保険料が割高になるのと同じことで、保険会社も「高リスクの物件に対しては敷居を上げたい」と思うのは自然の流れですよね。

物件の“区分”によって保険の種類やコストが変わる

建物にかけられる保険の種類や必要なコストは、その物件の性質によって大きく変わってきます。

具体的には、保険用語で「物件種別」と呼ばれる“性質ごとに定められた4つの区分(住宅物件/一般物件/倉庫物件/工場物件)”があり、それぞれ加入できる保険の種類が異なるのです。

中でも、個人として加入する保険に関わってくるのは「住宅物件」と「一般物件」の2つの区分となります。それぞれの定義は以下の通りです。

・住宅物件:「住居としての目的でのみ使用する」物件(戸建やマンションなどの専用住宅および共同住宅)

・一般物件:「住宅物件、倉庫物件、工場物件“以外”」の物件(専用店舗および店舗併用住宅・事務所・学校・病院など)

平たく言うと、住宅物件は「人が住むための物件」、一般物件は「(住宅・倉庫・工場を除いた)その他の物件」となります。

原則として、空き家は「一般物件用の保険」に加入する

空き家の特徴を上記の区分に照らしてみると、(現状は)住まいではない、工場・倉庫でもない、つまり「一般物件」に当てはまる(※)であろうことが分かります。ですので、空き家は通常「一般物件用の保険」に加入することになるのですね。

※後述しますが、条件によっては「住宅物件」と認められる場合もあります。
『年に数回でも「住居」として使っている場合は「住宅物件」とみられることも』

この一般物件用の保険、実は住宅物件が入れる保険よりも保険料が高くなるという特徴があります。(空き家だけでなく店舗や事務所など幅広い用途に対応した保険ですので、その分リスクも増加すると考えれば納得です。)

ただし、空き家と言っても“そうなる前”はそのほとんどが住宅として使われていたことでしょう。「一般用だと割高になるのなら、空き家になる前に加入していた住宅用の火災保険に加入し続けられないの?」という疑問が生まれるかもしれませんが、そう簡単にはいかないのです。

保険会社は現状を重視しますので、空き家となってからもなお継続して住宅用の保険に加入し続けようとしても、現状が廃屋状態・ゴミ屋敷状態であるなど「住まいとしての設備が整っていない・実際に人が住んでいる形跡がない」状態では受け入れてもらえないケースがほとんどです。(物件の用途が変わった【住宅物件→一般物件】とみなされ、それに応じて保険料も再計算する必要が生じるためです。)

そもそも、契約者は物件の用途が変わった時点で保険会社に連絡する義務があると定められていることが通常ですので、その連絡を怠って「以前の用途」での保険に入り続けた状態でいると、何らかの被害に遭っても補償が行われない(=保険金が下りない)可能性が非常に高くなります。

住まいや実家が空き家となってしまったら、潔く用途変更および保険プランの変更をしておきましょう。

空き家にかけられる保険の種類

実際のところ、空き家に対してはどのような種類・内容の保険をかけることができるのでしょうか。
少し掘り下げていきます。

■火災保険:火災・自然災害などによる被害に備える

空き家に限らず、建物にかける保険として最も重要性の高いものが火災保険」「です。

※一般物件、つまり空き家が加入できる火災保険は通常「普通火災保険」となります。(住宅物件に対応する火災保険は「住宅火災保険(・住宅総合保険)」となります。)

名前のイメージから「火事に対する補償だけなの?」という疑問を抱かれるかもしれませんが、実際は火災の他にも種々の自然災害や落雷・盗難など、かなり広範囲をカバーした内容であることがほとんどです(保険会社や契約プランによって範囲の境界線は変わってきます)。

「自然災害」の中には台風・強風や雹、大雪、水漏れまでもが含まれますが、気を付けなくてはならないのが「地震は含まれない」という点です。

後述しますが、地震による被害は別途「地震保険」でカバーすることになります。火災保険には補償適用外の災害がある、ということを頭に入れておきましょう。

Point:「火災保険」は火事の被害にとどまらず、自然災害や盗難など“建物本体や家財道具が被害を受けた場合”に広く補償されるが、地震や噴火・津波による被害は対象外である。

壊すのになぜ…? 空き家に火災保険をかける理由

いずれ壊してしまう家に、毎月お金を払って火災保険をかける必要性があるのでしょうか?

最も大きな理由として、人目につきにくい空き家は一般的な住宅に比べ「放火リスクが格段に跳ね上がる」という点があります。

普通の住宅なら、仮に放火の被害に遭ったとしても中に人が居れば早い段階で火元に気付き、燃え広がる前に鎮火できる可能性が高まります。また、万が一不在であったとしても、日頃の近所付き合いによって隣の家の住人などが異変に気付き、通報してくれることもあるでしょう。

空き家の場合にはそういった可能性さえ期待できなくなってしまい、最悪の場合、全焼・延焼…と被害が拡大する危険性を大いに孕んでいるのです。

また「燃えてしまえば建物は跡形もなくなって、解体の必要がなくなるのでは?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、答えは×です。燃え残った部分も適切に解体しなければなりませんし、燃え殼も本来なら「木くず」として分別・再利用できるはずの資源だったものが、すべて「ただの廃棄物」と化してしまいます。その処分費がかなり割高となるため、たとえ全てが燃え尽きたからといって“解体費用が浮く”ことにはならないのですね。

■地震保険:地震や火山の噴火による被害に備える

火災保険の補償ではまかなえないケースとして、地震や津波・火山の噴火、また“地震によって引き起こされた”火災などがあります。

これらの被害について補償してくれる「地震保険」ですが、実は単体で加入できるものではなく、必ず火災保険と一緒に加入しなければなりません。火災保険の補償内容だけでは弱いかな?と感じた場合に補助的に入る形の保険、と考えておきましょう。

しかし、今回のテーマにおいて最も大きな注意点があります。それは一般物件の区分にあたる“空き家”は、地震保険に加入できないということです。

そもそもの話、“一般物件である”とみなされた空き家は根本的に地震保険に加入することができないようになっているのです。なぜかというと、地震保険は「(地震による被害を受けた後の)生活の再建を補助するため」の保険であり、その性質に照らしてみると、空き家では目的にそぐわないことになってしまうからです。

Point:「地震保険」は火災保険に付帯するタイプの保険。住居物件であれば火災保険の半額程度の補償を受けられるが、「一般物件」では加入できないため、空き家を補償対象とすることは基本的には難しい。

年に数回でも「住居」として使っている場合は「住宅物件」とみられることも

今回のテーマ(「解体予定の空き家」)とは少しはずれますが、空き家は空き家でも「断続的に住居として使うことがある」物件であれば、たとえ継続的に住み続けなくても住宅物件とみなされて、火災保険+地震保険のセットに加入できる場合もあります。

「空室期間の出る賃貸物件」や、「日常生活が送れるだけの家財が常時置いてある別荘」などがこれにあたります。時おり住居として使われる、という状態が将来にわたって続くものと認められれば、コストの高い「一般住宅としての保険」に入らずに済むのです。

ただし、この情報を得たからといって、ほとんどゴミ屋敷状態の廃屋を「少しだけ片付けて住めばいいんでしょう?」などと考えるのは早計です!

その空き家を取得してからどれくらい放置されていたか? 実際に人が住めるほどの環境が整っているか? といった観点から総合的に判断されますので、いかにも「昨日今日で整えました」といった様相の環境では、住宅物件として認められない可能性が非常に高いためです。

空き家の火災保険料を少しでも安くする方法

火災保険に加入するとなったら、気になるのはやはり月々の支払い金額ですよね。

目安となる相場があれば多少の心構えができるものですが、建物の状態や加入内容によって金額の振れ幅が大きい火災保険には、残念ながら相場といものが存在しないのです。

まして「住宅物件」よりも掛け金の高い「一般物件」である空き家に対する保険ですので、その金額は想像を超えてくるかもしれません。

そんな火災保険の保険料を少しでも安くする方法はあるのでしょうか?

被害を受ける可能性が低いと考えられるものを補償対象から外す

たとえば、空き家にたくさんの家財道具を残したままにしている場合、その家財にも保険を適用させるなると月々の支払額も当然上昇してしまいます。少しでもコストを抑えるには、物の管理を杜撰にせず、これらを処分する/必要なものだけ自宅や物置など身近な場所に持ってきてしまう、といった対策を取ることが大切です。

また、「立地条件的にほとんど起こり得ない災害を補償対象から外す」という方法もあります。例としては、高台など海抜の高い場所に建っている建物ならば水害に遭う可能性は低いため、“水による被害に対する補償”を除外してしまう、といった寸法です。

評価額の満額ではなく、「一定割合まで」を補償する内容で契約する

通常の住宅物件(人が住んでいる物件)であれば、火災保険における物件への補償額は「建物の評価額の全額(100%)」となるように設定することが一般的です。

これは住宅が壊れてしまった場合、その部分(もしくは全部)を元通りに補修して生活を再建しなければならないためですが、「空き家」の場合はその必要がありませんよね。もともと解体するつもりなら、その解体費用分の金額を最低限まかなえれば良いわけです。(一般的な木造2階建ての場合、解体費用は100万円前後が目安となります。)

500万円と評価された物件ならば、満額の500万円を補償対象にせず、解体時に必要になると予想される100万円から200万円の間(この例では評価額の20%から40%の範囲)に設定することで、月々の余計な出費を減らすことができるのです。

せっかく保険に入るのだから、なるべく範囲は広い方が良い…と考えるのが人の性ではありますが、そう遠くない将来に解体する予定があるのであれば、毎月の出費は最小限にとどめておきたいところです。

「補償内容」と「コスト」の最適なバランスは個々の環境によって変わってきますので、ご自身の状況を鑑み、熟慮の上で選択されてくださいね。

まとめ

人目につきにくく、放火や荒廃・不法侵入など様々なリスクを抱えた「空き家」。さらに解体工事を控えているとなれば、当然保険も短期間の加入となり、保険料は想像以上の負担となってしまうことも。

リスク回避も大切ですが、あまりに劣化が進んだ、いわゆる「老朽家屋」に対して保険をかけたところで、最終的に手に入る保険金が雀の涙ほどではあまり意味がないことになってしまいます。

だからといって、「いずれ壊すなら保険に入らなくてもよい」「空き家になったらすぐにでも解体するべきだ」などと一概にアドバイスはできません。たとえば「解体工事の直前に被害に遭ったら?」「更地にしたら今度は固定資産税の負担が…」というように、どんな決定にもリスクは付き物だからです。

それを踏まえた上で、予算はもちろん、建物の劣化状況や地域の治安・個々の家庭事情など、色々な要素から最善の解決方法を導き出さなくてはならないのです。

解体サポートでは、こうしたお悩みを抱えた方や「すぐには解体しないんだけど…」という方からのご相談も多数お受けしております。

内容によってはそのまま解体業者さんをご紹介させていただくことも可能ですし、お見積もり依頼や他社で取得された見積もり内容の検討・検証まで、専任のサポートスタッフが最後まで親身にお手伝いさせていただきます。

「空き家の保険加入」か「すぐに解体してしまう」か…とお悩みの方も そうでない方も、どうぞお気軽にお問い合わせください。