契約といえば、身近なものでは賃貸契約や売買契約・雇用契約などを思い浮かべる方が多いと思いますが、あらゆる取り決めに際し後々のトラブルを防ぐために、「契約書」は非常に重要な存在です。

もちろん「建物の解体工事」も例外ではなく、「私(施主)はあなた(解体業者)に、このような内容の解体工事を確かに依頼しましたよ」ということを第三者から見ても明らかなように証明する手段として、契約を結ぶことが必要不可欠となります。

今回はそんな解体工事の契約書の内容について、必ず確認しておくべき5つのポイントを中心にご紹介していきます。

どのような契約を結ぶの? どうして必要なの?

一般的に、解体工事を行うにあたって結ぶことになる契約は「工事請負契約」となります。

契約を結んだら、当事者である「注文者(施主)」と「請負者(解体業者)」はそれぞれお互いに対し、契約した内容【請負者は期日までに建物を解体すること、注文者は解体工事が済んだら約束した代金を支払うこと】について最後まで責任を持って果たす義務が生じます。

※ただし、解体工事では特に、見積もりの段階で予想できる費用や工期の範囲にはどうしても限界があります(予期せぬ追加工事が発生したり、天候不順で工期が延びるなど、予定外の費用・日数が発生することがあるため)。こうした状況に柔軟に対応できるよう、地域性やその業者の特性に応じて解体業者ごとに契約書の書式が異なるのが実情で、解体工事の契約書には「これ」といった定型の書式は存在しません。

それゆえ素人目には「何が正しいのか」「どこを見るべきなのか」という点が非常に分かりにくく、比較対象も得にくい分、施主側にとって不利な内容の契約を結んでしまう可能性があります。

なかには件名と工事代金額・工期を記載されただけの非常に簡易的な契約書を用意している業者もありますが、このように内容が不十分な契約書でもサインした時点で契約自体は有効となってしまいます。あらかじめ細かな部分までしっかり取り決めて記載しておかないと、言った・言わないの水掛け論となりかねないため、始めにお互い納得できる内容かどうかを確認しておくことが大切なのです。

契約書を交わさないとどうなるの?

解体工事においては、そもそも「『契約書は用意していない』と主張された」・「催促しないと契約書が出てこない」という時点で、その業者は“ナシ”と判断するべきです。

なぜかというと、解体工事業の許可を受けた業者が建物の解体工事を行う際は、工事請負契約書を交わした上で行うことが建設業法により定められているからです。

令和元年6月時点で、建物の解体を契約書なしで行うのは「建設業法違反」にあたります。

(解体業の取り扱いに関しては、平成28年6月1日よりも前から「とび・土工工事業」の許可を持っていれば、令和元年5月31日までに限り「解体工事業の許可」がなくても解体工事をすることが可能とされていました。しかし令和元年6月を過ぎた今、原則として解体業は全て建設業法の適用下となり、工事前の契約が必須となっています。)

※「解体工事業」は平成28年6月1日に「とび・土工工事業」から独立新設した業種です。

契約する最適なタイミングは?

解体工事は「契約したらすぐに着工」、というわけにはいきません。特に、人気のある解体業者であれば直近の日程はほぼ埋まっている可能性が高いため、目安としては遅くとも着工希望の2~3ヶ月前には契約をしておきたいところです。

契約書で絶対に確認するべき5つのポイント

解体工事の契約は、建物の購入・車の購入と並んで人生でも指折りの大きな契約になりますので、心配事を挙げるとキリがないですよね。
なかでも特に気を付けるべき重要なポイントを5つ挙げましたので、これらを最低限確認していただければ「まさかの事態」を避けることができると思います。

【1】事内容・範囲の確定

一般的には、解体対象の建物の構造種別・階数がそのまま記載されます(「木造2階建て家屋」等)。

他にも、建物丸々一棟を解体するわけではない場合(建物の一部のみ解体する・一部を残してそれ以外を全て解体する、部分的に残す等)には、解体すべき場所を明確に示してあることを確認しましょう。

特に「残さなければいけない部分」がある場合、その範囲についてしっかり記載してあるかどうか、ご自身の目で確認することが重要となってきます。場合によっては文章だけでなく、施主側で図面を用意しておく(一緒に図面を見ながら範囲を指定する)のも有効です。

【2】解体工事代金の総額・支払い時期の記載

解体工事代金に関しては、依頼する前に提出された見積もり金額から無断に変更されていないかどうかをまずチェックします。

同時に、税込/税別の記載や支払い方法(一括/分割の別、銀行振込手数料の負担等)、支払い時期(工事完了から何日以内にいくらずつ払うのか)についても納得できるものかどうか確認しましょう。

※自治体や銀行の提供する解体工事ローン・助成金等を活用したい場合、その旨もあらかじめ伝えておくとスムーズです。(特に助成金は一度全額を支払ってから、その領収書と引き換えに下りることが大半ですので、すぐに全額を用意できない場合は支払い時期等について業者側と相談することも必要となるでしょう。業者によってはローンや助成金関連の手続きに慣れていることもありますので、まずは活用する旨を伝えておくことが大切です。)

【3】工期の記載

工期(解体工事完了までにかかる日数)は見積もりの時点で施主側が希望を伝えているケースが多いと思いますが、大抵はその範囲内で設定されているはずです。契約と同時に工程表(工事のスケジュール表)を渡されることがほとんどですので、基本的にはその通りに進むと考えて問題ありません。

こちらも無断で期間を延ばされていたり、不審な記載がないかどうか確認しておきます。

台風や地震といったやむを得ない理由で工事が途中ストップしてしまう場合がありますが、こればかりはどうしようもありませんので、「雲行きが怪しくなった時点(工期が1日以上遅れることが確実となったタイミング等)で施主に連絡を取る」といった内容があるかどうかチェックしましょう。

それ以外の理由、たとえば業者側の人員の問題(職人の遅刻が続く・近隣トラブルを放置する等)やただ単に見通しが甘く予定工期を超過した場合などには追加費用を払わない旨を記載しておくと安心です。

【4】瑕疵担保責任・損害賠償について

「瑕疵」とは、簡単に言うと「隠れた欠陥や不具合」のことです。

解体工事においては、「見積もりに無い地中埋設物が出てきた際、施主に相談なく撤去・処分し、無断で契約金額に上乗せした」、「通常処分しなければならない廃材を故意に地中に隠した」という問題が事後発覚した場合などが瑕疵にあたりますが、このような場合に「請負者は施主に対して一定期間の瑕疵担保責任を負う」といった記載があれば、法外な追加費用の要求があってもはねのけることができます。

また、解体工事そのものに対してだけでなく、作業中のミスによって「第三者(近隣住民や通行人、隣家)」に損害を与えてしまった場合の取り決めも必要です。

常識的にはミスをしてしまった業者側が損害賠償責任を負うことになりますが、念のため賠償責任の所在を書面上でもきちんと明記しておいた方が安心です。

【5】引き渡し(工事完了)の基準

解体工事の完了の基準についても最初に線引きしておく必要があります。

同時に、引き渡しの時期が契約書面上できちんと示されていることを確認します。

一般的には全ての作業が終了し更地となった現場で、施主が立ち会いの上で解体工事の完了を確認しますが、現場が遠方で立ち会えない場合などは個別に取り決めが必要となります(現場写真の提供を求める、テレビ電話をもって立会い確認に代える等)。

まとめ

解体工事は、金額的に決して気軽に決断できるものではないにもかかわらず、業界内では長らく「契約書を作らない」という業者が(少数ではありますが)存在していました。

近年の法整備によって多少は改善されたものと思われますが、最終的に自分の身は自分で守るしかありません。現実的には契約書がなくても着工自体は可能ですし、業者が「施主に知識がない」と見越して契約書を交わさずに工事を開始したあとで、工事に関する重大な失敗や資金の焦げ付きをきっかけに夜逃げをされてしまえば、施主側は泣き寝入りせざるを得ないこともあります。

「あのときしっかり契約を結んでおけば…」と後悔することにならないよう、お互いに納得のいく契約内容でしっかりと契約書を作成することが何よりの防衛策なのです。

解体サポートでは、そういったトラブルの心配がない優良な解体業者のみと提携・ご紹介しておりますので、自力で業者探しをする時間がない方にも安心してご利用いただけます。

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また、解体に関するトラブルのご相談にもお答えしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。