日本の空き家の数は、年々増え続けています。
中にはきちんと手入れのされている建物もありますが、「迷惑空き家」と呼ばれる老朽化の激しい空き家が増加すると、街全体の景観・治安の悪化、倒壊・崩落や火災発生のリスクも出てくるため、大きな行政課題ともなっています。

老朽空き家

そんな中、空き家の発生を抑制するための特例措置として、“被相続人が居住していた家屋を相続した相続人が、当該家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む)または取り壊し後の土地を譲渡した場合には、当該家屋または土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除できる”ことになりました。

簡潔に言うと「空き家を相続した丸3年目の年末まで、かつ平成31年までに譲渡すれば、売った家または土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除できる」という制度なのですが、他にもいくつか要件がありますので、本ページでもう少し掘り下げて紹介していきます。

【関連リンク】
空き家問題について
空き家対策特別措置法について
全国空き家バンク情報

特例のイメージ

空き家の発生を抑制するための特例措置

適用期間(譲渡が済んでいる必要がある期間)

■相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで
かつ、
■特例の適用期間である平成28年4月1日から平成31年12月31日まで
の期間中に譲渡が済んでいる必要があります。

譲渡所得の計算方法

■この特例を適用した場合の譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費- 譲渡費用(除却費用等)- 特別控除3,000万円
※譲渡価額×5%。取得費が不明の場合、譲渡価額の5%で計算

■具体例
相続した家屋を解体して、解体後の土地を500万円で譲渡した場合
【前提条件】①昭和53年築 ②解体費用100万円 ③被相続人が20年所有 ④取得費不明

●特例を適用した場合の所得税・個人住民税額
(500万円 - 500万円 × 5% - 100万円 - 3,000万円)× 20% =0円

●特例がない場合の所得税・個人住民税額
(500万円 - 500万円 × 5% × 100万円)× 20% =75万円

適用を受けるにあたってのポイント

POINT1  相続発生日を起算点とした適用期間の要件

繰り返しになりますが、「相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで」、かつ「特例の適用期間である平成28年4月1日から平成31年12月31日まで」に譲渡することが必要です。

【例】平成25年1月2日に相続が発生した場合
 本特例の対象となる譲渡期間:平成28年4月1日~平成28年12月31日

POINT2  相続した家屋の要件

特例の対象となる家屋は、次の要件を満たすことが必要です。

【1】相続の開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていたものであること
【2】相続の開始の直前において、当該被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
【3】昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること
【4】相続~譲渡の時まで、事業の用・貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと


(※相続した家屋を取り壊して土地のみを譲渡する場合には、取り壊した家屋について相続の時から当該取壊しの時まで事業の用・貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと、かつ土地について相続の時から当該譲渡の時まで事業の用・貸付けの用または居住の用に供されていたことがない必要があります。)

POINT3  譲渡する際の要件

特例の対象となる譲渡は、次の要件を満たすことが必要です。
【1】譲渡価額が1億円以下であること
【2】家屋を譲渡する場合(その敷地の用に供されている土地等も併せて譲渡する場合も含む)、当該譲渡時において、当該家屋が現行の耐震基準に適合するものであること

他の税制との適用関係

■本特例は、
 「自己居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」
 または
 「自己居住用財産の買換え等に係る特例措置(特定の居住用財産の買換えの特例)」
 のいずれかとの併用が可能です。
■本特例は、相続財産譲渡時の取得費加算特例と選択適用となります。

特例措置の適用を受けるために必要な書類

A. 家屋又は家屋及び敷地等を譲渡する場合

①譲渡所得の金額の計算に関する明細書
 ・確定申告書の提出に合わせて、「譲渡所得の内訳書」として提出。

②被相続人居住用家屋、及びその敷地等の登記事項証明書等
 ・法務局にて家屋、及びその敷地等の登記事項証明書等を取得可能。

③被相続人居住用家屋又はその敷地等の売買契約書の写し等
 ・家屋又は敷地等の買主との売買契約書の写し等を提出。

④被相続人居住用家屋等確認書
 ・被相続人居住用家屋の所在市町村に申請し、交付を受ける。

⑤被相続人居住用家屋の耐震基準適合証明書、又は建設住宅性能評価書の写し

B. 家屋の取壊し、除却又は滅失後の敷地等を譲渡する場合

①譲渡所得の金額の計算に関する明細書
②被相続人居住用家屋、及びその敷地等の登記事項証明書等
③敷地等の売買契約書の写し等
④被相続人居住用家屋等確認書

その他、被相続人居住用家屋等確認書を交付するために必要な書類についてなど、さらに詳しい内容は下記リンク・各市区町村へご確認ください。

■参照
元国土交通省HP「空き家の発生を抑制するための特例措置について」http://www.mlit.go.jp/common/001170609.pdf